駿台甲府高等学校同窓生医師による医療情報 ドクターリレー Vol.3
2012年4月2日
平賀 寛孝(4期 塩川病院内科勤務)
とある日、私の外来に「俺の胃にもペロリ菌?!が居ないか調べてくりょー。」と、80歳過ぎの患者さんがやって来ました。「あ?、ピロリ菌の事ですね。分かりました。今、何か症状はありますか?」と診察を始めました。
みなさんはヘリコバクターピロリ菌を御存じですか?
日本人の40歳以上では約7割の方が感染していると言われているピロリ菌についてお話します。
古来より胃のような酸の強い状況下では細菌など居るはずが無いと思われていました。ところが、このピロリ菌は胃の中に住み胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因になっている場合があることが分かってきました。ヘリコとは「らせん」を意味し、ヘリコプターの「ヘリコ」と同じです。バクターはバクテリア(細菌)のことです。ピロリは胃の出口の幽門をさし、この菌が胃の出口付近から多く見つかることに由来します。
ピロリ菌に感染すると必ず胃潰瘍になるわけではありませんが、慢性胃炎や胃潰瘍で苦しむほとんどの方がこのピロリ菌に感染しています。また世界的に見て日本人に胃癌が多いのはこのピロリ菌が原因とも考えられています。まさに国民的感染症です。
ピロリ菌感染者の全員が治療を必要とするわけではありません。治療した方が良いのは、いわゆる潰瘍持ちの方です。現在ではこのピロリ菌を治療することができます。1週間お薬を飲むだけで約8割の方が除菌(治癒)できます。健康保険も適応されます。除菌に成功すると潰瘍で悩まされることから解放され、胃が若返ります。
胃の調子の悪い方は一度検査をされてみては?ピロリ菌が居るか居ないかは胃カメラをしなくても分かりますが、何か症状のある方は胃カメラをお勧めします。「百聞は一見にしかず」です。(内視鏡でピロリ菌が直接見えるわけではありません。)お近くの消化器内科にご相談下さい。
さて私はというと、幸いピロリ菌はいないようです。焼酎で毎日消毒してるからかも知れませんが・・・。
医師も一生勉強などと言われます。あれ程勉強嫌いだった私ですが、医師になってからは不思議と受験勉強ほどの苦痛は感じません。仕事だからでしょうか?患者さんのためでもあるからでしょうか?一日の最後に晩酌しながら考えても、まだ答えは出ません。
ただ言えるのは、病気を診ることはもちろん、人間を見ることの難しさを痛感しています。
この辺で次の方にバトンタッチしたいと思います。ご一読ありがとうございました。