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駿台甲府高等学校同窓生医師による医療情報・ドクターリレー Vol.18

石井 正紀(3期 笛吹中央病院 外科 勤務)

 当時、校門を出るとすぐにKとE商店が並んであった。甲府工業高との間の道は今よりずっと狭く車通りも少なかった。そのため、駿台生と向かいの甲府工業生が入り混じって、商品を物色することになる。血気盛んな時期の他校生との接触である。何等かの問題が起きることは容易に想像がつく。ところが、そのようなことは全くなかった、不思議である。高校卒業後、長らく東海大の医局でお世話になり2010年に山梨に戻ることとなった。そんな折、甲府工業出身の中学の同級と飲む機会があり聞いてみた。なんでトラブルがなかったのだろう?「だってお前ら変だったもん、近寄っちゃいけないと思った。」確かに当時、茶髪、髭、ロン毛、サンダルの登校が可?あまりに価値観が違いすぎると争いは起こらないらしい。

 さて、現在、私は笛吹中央病院に消化器外科医として勤務している。外科医なので当然手術はしている訳だが、なかでも腹腔鏡手術を中心に診療しているので、紹介しようと思う。腹腔鏡下手術は炭酸ガスで膨らませたおなかの中に、直径が5-10mmほどの筒状のカメラを入れ、カメラを介してモニターに映された画像を見ながら行う手術である。本邦では消化器に限ると1990年に胆嚢と大腸の手術が初めて行われ、1991年に胃切除が、現在は膵臓、脾臓、肝臓なども腹腔鏡下で行うことがある。腹腔鏡下手術の長所はいろいろあるが、主には小さな穴しか開けないので傷が小さく術後の痛みが少ない、整容性に優れている。術後の回復が早いなどがある。また、出血させてしまうとモニター画像が非常に見づらくなるため、丁寧に出血させないように手術を進める必要がある。結果として出血量は開腹手術より圧倒的に少ない。最近、胆嚢摘出術では、単孔式と言って臍を2㎝ほどしか切らないで行う手術も行っている。単孔式腹腔鏡下手術は手術の傷がほとんどわからないので若い女性の急性虫垂炎にはお勧めである。短所は手術時間が多少長くなること、色んな医療機器が必要なことぐらいと思う。

 20数年前の腹腔鏡下手術開始当初は手術ミスに近い合併症が報告された。しかし、現在ではそのようなことはかなり少なくなっている。合併症減少は術者の技量が上がった以外に大きな理由がある。テレビ画質の進歩とともに手術でのモニター画質が著しく向上したからである。1990年代、腹腔鏡下手術が開始された当初のモニターは、小型の20インチ程度のブラウン管であった。フルハイビジョンの大型モニターを使用している今となってはよくあんなもので手術をしていたなと思う。やはり、目が良く見えなければ手術はできない。ここ数年では3Dモニターの腹腔鏡下手術が始まっていて、メガネが邪魔だがこれはかなり良い。残念ながら3Dモニターは勤務先では高くてとても購入できない。

 しかし、近い将来8Kモニターが販売されたら、是が非でも県内で最初に買ってもらうつもりである。8Kの美しい奥行のある画像を見ながら手術を行いつつ、道具に頼りながらも、山梨の地域医療にと貢献できたらと思っている。

=石井正紀さんの経歴=
1985年3月 駿台甲府高等学校卒業
1993年3月 東海大学医学部卒業
1993年4月 東海大学医学部附属病院研修
1998年4月 東海大学大磯病院助手
2000年4月 池上総合病院外科
2002年4月 寿康会病院外科部長
2004年4月 東海大学医学部附属病院助手
2005年4月 東海大学大磯病院 講師
2010年4月~笛吹中央病院 外科医長

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