駿台甲府高等学校同窓生医師による医療情報・ドクターリレー Vol.20
2015年2月2日
市川 健(3期 市立甲府病院勤務)
現在は市立甲府病院皮膚科に勤務しており、卒業は島根医科大学(国立大学の統合により島根大学医学部と改称)です。
私が入局した信州大学は当時メラノーマ(悪性黒色腫)をはじめとする悪性腫瘍をおもに専門とする教室でした。中でも進行期メラノーマや、大型の腫瘤を形成した有棘細胞癌、血管肉腫などはやはり予後が悪く、残念ながら多くの方が亡くなりました。最近では治療の進歩により進行期メラノーマでも治癒する症例が増加していると聞き、隔世の感があります。どうにか全身麻酔下での広範な悪性腫瘍切除術のメインオペレーター担当や、その皮膚欠損部への植皮術、術後の化学療法なども任せてもらえるようになり、やがて教室を離れ、一人医長として当地に赴任を命ぜられ現在に至ります。
さて、読者諸賢の中には医学科を目指す在校生もおられるでしょうが、あまり意識にないであろう医学研究について参考までに述べたいと思います。最近、研究は概して好まれない傾向にあるようです。私は信州大学病院勤務時に教室から幸運にも研究に専念する期間を与えて頂きました。
私が行ったのはメラノーマ培養細胞にヒアルロン酸産生遺伝子を導入し運動性の変化を観察するというものでした。切り出した遺伝子のプラスミドへの組み込み、作成したDNAの培養細胞への導入等々行いましたが、その過程で何度も障壁に阻まれました。しかし、その都度かろうじて危地を脱することができました。最終的に整合性がある結果が得られ、英文論文を作成し、それなりのJournal(あくまで皮膚科分野内に過ぎないですが)に受理されたのは幸運でした。臨床医として日々の研鑽、診療に励むことは、いうまでもなく大切でしょう。それとともに研究に没頭する時期があっても良いのではないかと思います。そのたゆまぬ努力がなくては医学の進歩もありません。
当院にも現在に至るまで多数の駿台甲府高校出身者が勤務しています。医師のみでなく、看護師、薬剤師、事務職員にも、そして情報提供に来てくれる製薬会社のMRさんにも同窓生がいました。3期生といえば、ようやく3学年がそろった年の入学です。それがもはや年季を経て、これほどにまでに多くの駿高卒業者が、社会の中核として活躍しているとは感慨深いものがある今日この頃です。