%e9%a7%bf%e5%8f%b0%e7%94%b2%e5%ba%9c%e9%ab%98%e7%ad%89%e5%ad%a6%e6%a0%a1%e5%90%8c%e7%aa%93%e7%94%9f%e5%8c%bb%e5%b8%ab%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%e5%8c%bb%e7%99%82%e6%83%85%e5%a0%b1%e3%83%bb-14

駿台甲府高等学校同窓生医師による医療情報・ドクターリレー Vol.27

秋山 裕太郎(24期 山梨県立中央病院 総合診療科/感染症科勤務)

 ドクターリレーVol.27を担当いたします24期生の秋山裕太郎です。現在私は、2015年4月に新設された総合診療科/感染症科の後期研修医として山梨県立中央病院に勤務しています。山梨県立中央病院は駿高の近くにあるので、病院の窓を覗くと懐かしい校舎を見ることができます。その度に当時の楽しく充実した日々が思い出され胸が熱くなります。
 今回は私が専攻している感染症についてお話させて頂きます。
 感染症科は、細菌やウイルス、真菌(カビ)などの微生物が起こす病気を担当します。アレクサンダー・フレミングが1920年代にペニシリンを発見(高校の生物の授業で習いました。懐かしいです。)して以降、人類は次々と新たな抗菌薬を開発してきました。それに公衆衛生の普及が加わり、人類は感染症の脅威から逃れる事ができたかの様に思われました。しかし、近年のグローバル化によるエボラ出血熱や鳥インフルエンザなどの新興感染症の出現や、結核など再興感染症の再流行が問題となっています。また、抗菌薬の濫用により、既存の抗菌薬が効かない耐性菌が増加しています。最近では細菌感染治療の切り札であるカルバペネム系抗菌薬に耐性を持つ腸内細菌が出現し、米国疾病対策予防センターが「悪夢の耐性菌」として警鐘を鳴らしています。
 このように、感染症は再び人類の前に大きな脅威として立ちはだかっており、感染症診療の専門家である感染症科の重要性が増してきています。次の世代のために私達ができる事は、新たな耐性菌の出現を防ぐ事です。安易な抗菌薬投与はしない、切り札となる抗菌薬はなるべく使わないなど、医師には抗菌薬の適正利用が求められます。そして、患者側も抗菌薬を「求めない・飲むならきちんと・もらわない・あげない」ことを心がける必要があります(WHOの抗菌薬啓発4原則)。例えば風邪はウイルス感染であり抗菌薬は効かないので、医師に処方を「求めない」。抗菌薬にはそれぞれ適正な内服期間・内服量があるので、それらを守って「きちんと飲む」。親切心から抗菌薬を分けてくれる人がいても「もらわない」。もちろん、誰かに「あげない」ことも重要です。
 抗菌薬開発の歴史は、耐性菌とのいたちごっこです。いつか人類が開発できる抗菌薬では太刀打ちできない耐性菌が出現するかもしれません。私達1人1人が抗菌薬の適正利用を意識することが、人類の未来を守ることにつながります。

経歴
2006年3月 駿台甲府高校卒業
2013年3月 山梨大学医学部卒業
2015年3月 初期臨床研修修了(山梨県立中央病院)
2015年4月 現職

写真は病院のトレッキング部で北岳に登頂した際のものです(2015年6月)

Sponcer