駿台甲府高等学校同窓生医師による医療情報・ドクターリレー Vol.30
2016年10月3日
相川 勝洋(20期 北海道大学病院 麻酔科 勤務)
はじめまして。駿台甲府高校20期生の相川勝洋(あいかわかつひろ)と申します。現在は北海道大学病院で麻酔科医として勤務しております。私が山梨を遠く離れ北海道を目指した理由は、小学生の頃発症したひどいスギ花粉症でした。高校1年の時北海道にはスギが少ないと知り、花粉症から解放されたい一心で勉強に励みました。期待通り移住後花粉症は劇的に改善しました。さらに夏には蚊や熱帯夜でイライラすることもほとんどなく、食べ物が美味しいところもすっかり気に入り、気付けば北海道生活も早15年となりました。皆さんも是非機会があれば北海道を訪れてみてください。
さて、北海道の魅力はさておき、本日は手術の時には欠かせない麻酔についてお話したいと思います。
麻酔には大きく分けて、局所麻酔と全身麻酔の二種類があります。
局所麻酔は、文字通り神経による痛みの伝達をブロックする局所麻酔薬を使用します(歯の治療をするときなどに用いられるあれです)。歯科のように処置をする部位に直接注射することもあれば、切開する部位の痛覚を支配している神経周囲に投与する場合もあります。小さな手術なら意識を保ったまま局所麻酔単独で行うことができます。入院が不要で患者さんの生活に与える影響を小さく抑えられたり、体に対する負担が小さいのがメリットです。
一方、大きな手術では全身麻酔が必要となります。全身麻酔は医療用麻薬や鎮静薬を全身投与することで無意識・無痛状態を作り出します。自発呼吸が不安定になるため、気管内挿管をしたうえで人工呼吸を必要とします。麻酔から醒めたあと一定時間の観察を要するため、一般的には入院を要します。(注:ここまでの説明は一般論であり、必ずしも全てのケースに当てはまらないことをご了承下さい)
全身麻酔を伴う手術を控えた患者さんから、麻酔をかけたら目が覚めないんじゃないか?と聞かれることが時々ありますが、麻酔から覚めないということはまずありません。健康な人なら、麻酔を切って30分以内に問題なく覚醒します(すっきり醒める人もいれば、しばらく寝ている人もいて、この点には個人差があります)
麻酔科医は術中常に患者さんの状態を監視し、また手術後の苦痛がなるべく少なくなるよう管理しています。心不全や呼吸不全があるなど手術前の全身状態によってはもちろんリスクが上がりますが、もともと日常生活に支障が無い方の場合、麻酔で深刻な問題が起きることはほとんどありません。馴染みが無いので間違ったイメージが先行している感がありますが、麻酔に対してどうか不必要に不安にならないで頂ければと思います。