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朝日酒造 細田康社長(3期生)からのメッセージ

 今年3月に実施したOB旅行で、新潟県にある朝日酒造株式会社を訪問しました。銘酒「久保田」で有名な同社は3期生の細田康さんが社長を務めておられます。大変お忙しい中、快く迎えてくださった細田社長に、高校時代の思い出や今後の会社の方向性などについて語っていただきました。

朝日酒造 細田康社長(写真中央)

塩澤:前回、前々回と周年記念同窓会におきまして、細田先輩の会社の日本酒をご提供いただき、ありがとうございました。同窓生皆がとても喜んでくれました。今年の11月9日の45周年同窓会にも、ご都合がつくようでしたら、ぜひお越しください。今日は、駿台甲府のOBとしていろいろお話を聞かせていただきたいと思っています。早速ですが、学生時代はどんな感じでしたか?

細田:いや、まさに不適切でした(笑) とくに寮がある時代にいらっしゃった方は言えないことが多いと思います。まして、会社を代表する立場になってしまうと、まあ言えないです。黒歴史です(笑)。

寺井:細田さんは新潟県出身ですか? なぜ駿台甲府高校へ?

細田:そうです。ちょうど新潟からでたかったんですね。中学生の時、駿台進学研究会の模擬試験を受けるために毎月、東京へ通ってました。冬に東京へ行くときには、新潟は雪。そして群馬との県境のトンネルを越えると、まぶしいくらいに晴れてるわけですよ。青空から元気をもらっているような気分になりました。冬の間ずっと新潟の鉛色の空を見てると、県外に出てみたいという思いが大きくなっていった事を記憶しています。もともと父母は関東の人間ということもありましたし。できれば新潟から出たいという思いが募っているところに、駿台進学研究会から推薦で駿台甲府高校へ行かない?とお誘いただいたので、行ってみようかと。寮があるっていうところも、家から出たい年頃の私にはうってつけでした。両親にはずいぶんわがままを聞いてもらいました。

塩澤:中学まではずっと新潟だったんですね。山梨は、どういう風に感じました? 新潟と違う気候とは思いますが。

細田:私の祖父の墓は静岡の由比にありました。毎年、墓参りをしていたものですから、心情的にはそんなに遠い場所ではなかったですね。静岡と山梨には“細田”っていう名字が多いですし。

淡路:新潟から山梨の駿台甲府に来たことは、人生の中でどんな位置付けですか?

細田:仕事する上でも、生きていく上でも、いろんな考え方の意識が芽生えた原点にあたるポイントでした。先生方のキャラクターも特別でしたし。まだ、20代前半位の先生方が沢山いらっしゃり、兄貴のような先生方と共に過ごした時間や自由にやらせてもらえる時間は、かなり貴重だったと思います。自分自身が形成されていくうえで非常に重要な時期となりました。


遠藤:男子校で抵抗感はなかったですか?

細田:それは全くなかったですね。男子高というのも人生の中で一度体験できたことはいいことだったと思います。まして半分は地元の方、半分は全国各地の出身者が集まっていたので、それぞれの地域の文化などを知る機会にもなりました。大学生になる前にそういう経験ができたことは貴重だったと思います。

淡路:私どもの同窓会の周年事業の時にいろいろご提供いただいて、駿高に対する思いをとても感じます。

細田:そうですね。私は、共学になったり、寮が無くなってからはわかりませんが、当時は、同じ釜の飯を食った仲間たちがいて、一年365日、昼も夜も同じ顔を突き合わせているわけです。仲たがいしても一緒に生活していかなきゃいけない。その中で付き合えるようになっていく人間関係っていうのはちょっと特別なものだなっていう気がしますね。

塩澤:高校時代に培われて現在、役に立っているようなことって何かありますか?

細田:先生も若くて自由な校風。 そういう中で、若い先生方からいろんな言葉をいただきました。本質に向き合わなきゃいけないこと、そして、逃げたらダメだっていうことですね。ある先生の言葉が心に残っています。私たちの頃は試験で平均点設定が40点、 赤点がその半分の20点という感じの難易度で作られてたんですけど、ある科目で本当に何人もの人間が一桁の得点しか取れず、赤点になってしまう教科があったんです。そうなると、みんな“出席でなんとか真面目さをアピールしてカバーしたい”などと姑息なことを考えるんです(笑)。でも、その先生は「お前ら真面目に出席したふりして、こんな点数しか取れないなら、来なくてもいいから家でちゃんと勉強しろ」と。“出席点”で表面を繕おうとする生徒に「来なくてもいいから」って言えるのは、あの当時のうちの学校の魅力?。豪快さですかね。「点を取るという本質から逃げるな」ということですね。今の自分に活きているところもあると思います。

寺井:その先生の教え方が悪いのでは? 

細田:当時は言えませんでしたね(笑)。というより、やっぱり苦手なものから逃げて、勉強しなかっただけですよね。ですから、本質とは違うところ(出席)で取り繕おうとしてしまう。でも、まずやるべきことをやる。目の前のやんなきゃいけないことにしっかり立ち向かっていくことが大事だと、先生の言葉で感じましたし、重要な事だと思います。また、親元から離れ、遊ぶことに一生懸命だったので、“どれだけ勉強しないで効率よく点数を取れるか”と常に考えていました。その考えに基づく行動も、社会に出てから活かされたなと思います。
 例えば、寮の中ではみんな毎晩のように互いの部屋に遊びに行くわけですよ。親元から離れてますから。でも中学生時代はそれなりの成績を取ってきた連中ですから、勉強してないのに、試験では何とか点だけはを取ろうとするんですね(笑)。だから限られた時間で点数を取るべく、現状と単位習得に必要な知識とのギャップをちゃんと見極めて、みんな時間割作るんですよ。時間がどれだけあって、今の自分の能力がこれだけあって、これだけやらなきゃいけないとか、これだけは理解しなきゃいけないっていうものを見極めて、限られた時間をどう使っていくか。まさにバックキャストですね。
 社会人になってから余裕を持って仕事できることなんてありません。高校時代に身についた、お尻から逆算してものを考えるっていう癖は、社会人にとって基礎みたいなものですから、後に大変役にたちました。周りがみんなそういう行動をする人が多かったという環境が、自身の習慣形成に大きく役立ちました。もちろん時間割作るだけで満足している人もいましたけど(笑)。
 あと、歴史の先生が、「カンニングペーパーを作れ」とよくおっしゃってました。何を書くか?分かってることを書いたって無駄。重要かつ“覚えてないのが明確な事”を書かなきゃ領域がもったいない。仕事でも一緒ですよね。やっぱりクリアしなきゃいけない課題と現状のギャップを明確にして、それに対して対策を取る。そのような捉えかたも、たぶん高校時代に培われて、大学時代で磨きがかかっていったのだと思います。


塩澤:高校時代は、部活をされてたんですか?

細田:陸上部でした。私は、中学生の時に100m走で、新潟県の2番目か3番目くらいに速かったんです。ただ、 高校に入学した頃は受験勉強で、運動もしていないのでボロボロになってました。でも、一応陸上部に入部しました。最初の春の大会で走り幅跳びに出場した時、コケてしまって。やる気だけじゃ無理でしたね。最後まで辞めずにはいましたが、途中から名前だけ在籍していた状態でした。顧問の先生のご厚意もあり、陸上部主将という肩書きで卒業アルバムには写っていたように記憶しています。

塩澤:今日お伺いして、大きな会社だなとぼくら全員びっくりしたんですけど。今後の会社の目標は何ですか?

細田:そうですね、日本酒は、世界で少しずつ理解していただけるようになってきました。まだまだ日本食レストランで飲んでいただくのがほとんどですが、日本のお寿司屋さんでワインが飲まれるように、海外の食の場でも日本酒が選択肢に入れてもらえるようなところまで頑張りたいと思います。あとは、お米からこんな素敵な香りが出るということ、まさに米の不思議さを世界の方々に理解してもらえればと思いながら仕事をしてます。

塩澤:商品のアピールや、今、取り組んでいることを教えてもらえますか?

細田: 私どもは、お酒の良さも知っていただきたいという思いとともに、新潟のお米の良さも知っていただきたいという思いで、久保田を造っています。農家の方々と一緒になって、米づくりから仕込みまで、みんなの意志をつなぎながら仕事をしています。久保田は銘柄全体としては、どちらかというと香りが控えめなんです。しかし、「久保田 純米大吟醸」は、今までの日本酒に対する認識を変えられるような華やかな香りもあり、若干の甘みもありながら、お料理と一緒に合わせていただいても美味しく召し上がっていただくことができます。とてもおすすめですね。

塩澤:皆さん聞きました? 売店にありますか?

細田:黒いラベルです。甘さがあっても喉元すぎるとスッと切れていく。あとは、「久保田 萬寿」の“深み”も是非皆さんに体験していただきたいです。 飲んだことある方が多いかもしれないですが。

塩澤:では後ほど、お土産に売店で購入させてもらいます。いろいろ当時の興味深いお話をいただいて本日はありがとうございました。

細田:ありがとうございました。

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