駿台甲府高等学校同窓生医師による医療情報ドクターリレー vol.72
2025年7月12日
今回、ご縁を頂きまして、ドクターリレーを担当します駿台15期生の山崎佐枝子といいます。
私は家族が医師であったこともあり、幼い頃から医師になりたいと思っていました。男女雇用機会均等法という法律ができて、これからは女性も働く時代になるよ、と言われた時に、何か資格を取った方がいいんじゃないかと思い、患者さんから「ありがとう」と言ってもらえる医師という仕事に魅力を感じていました。
ところが、高校時代の成績は伸び悩み、医学部合格は厳しい状態でした。どうすれば現役合格できるか考えた結果、山形大学の自己推薦入試を受けました。当時、国立大学の推薦入試は珍しかったこと、女性の合格者が多かったこと、試験が私の得意な英語、論文だったことが理由です。受験勉強は進みませんでしたが、各校の入試方法の比較研究は熱心にやっていました。学生時代はよい友達に巡り会うことができて、楽しく過ごせました。
私が卒業したときに、新臨床研修制度が始まりました。7年かけて卒業した私は、まだ何もできない、このまま山梨に帰る訳にはいかない、と、研修先は信州大学と関連病院プログラムを選び、2年間の研修医生活後、信州大学の循環器内科を選びました。
循環器内科の花形といえば、心筋梗塞のカテーテル治療など、急性期の救命に力を発揮することかもしれません。ですが、私の志望動機は、心臓血管外科の手術後に糖尿病の管理もされずタバコを吸っている患者さんを見て、「これはなんとかしないといけない」と思ったことです。生活習慣病の管理で心血管病になる患者さんを少しでも減らしたい、減らせるはずだ、と考えています。
その後、循環器内科の中でも心臓リハビリテーション(心リハ)という分野を中心に勉強してきました。心リハとは、心臓病の患者さんが体力を回復し、社会生活へ復帰することを支援するとともに、再発や再入院予防を行うプログラムのことです。薬物療法だけでなく、運動療法や生活指導、患者教育などを行います。心肺運動負荷試験で運動耐容能を評価し、適切な運動習慣を身につけることで、再発予防につなげます。急性期に苦しく、安静を強いられていた患者さんが、「こんなに動けるようになった」と言うのを一緒に喜ぶことがなにより楽しいです。保険収載され、学会のガイドラインにも記載されている治療ですが、当時の長野県では、まだ誰も専門にしていない領域でした。心リハを実践し、成功体験を持って、各病院へ心リハの普及活動を行い、コメディカル教育を担当しました。大学から心リハを発信し、新たな治療が県内へ浸透し、医療の質が向上していく中心にいられたのは、とてもよい経験でした。
コロナ禍を経験し、移動制限があった中で、そろそろ山梨に帰ろうとUターン転職を決めました。山梨の心リハは一部の病院でしか行われていないようですので、これまでの経験を活かし、心リハの普及活動、心血管病の予防に貢献できればと思っています。
〔現職〕笛吹中央病院 循環器内科 医師
〔学歴〕平成16年3月31日 山形大学医学部医学科卒業
平成25年3月31日 信州大学大学院医学系研究科卒業 学位:医学博士
〔職歴〕平成16年5月14日(2004) 信州大学医学部附属病院(研修医)
平成17年4月1日(2005) 飯田市立病院(研修医)
平成18年4月1日(2006) 佐久市立国保浅間総合病院内科
平成19年4月1日(2007) 諏訪赤十字病院循環器科
平成21年4月1日(2009) 信州大学医学部附属病院循環器内科 医員
平成25年4月1日(2013) 信州大学医学部附属病院 リハビリテーション部 診療助教
平成28年9月1日(2016) 信州大学医学部附属病院 リハビリテーション部 助教
平成30年4月1日(2018) まつもと医療センター 循環器内科 医師
平成31年4月1日(2019)まつもと医療センター 循環器内科 医長
令和7年4月1日(2025) 笛吹中央病院 循環器内科 医師
〔所属学会、資格取得〕
日本内科学会 認定内科医 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本心臓病学会
日本心臓リハビリテーション学会 心臓リハビリテーション指導士、認定医、評議員
日本脈管学会 脈管専門医 日本心不全学会 弾性ストッキングコンダクター

山崎佐枝子さんと学会スワンくん

心臓リハビリテーションの様子

学会で発表