駿台甲府高等学校同窓生医師による医療情報ドクターリレーvol.65
2022年12月9日
土橋 昭(17期 東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座 講師)
ドクターリレーVol.64を担当することになりました、17期の土橋昭と申します。私は、駿台甲府中学校1期生でもあります。中学校入学当時は、全校生徒が80人しかおらず、常に最高学年という環境でしたので、のびのびとした中学校生活を送り、駿台甲府高校に入学しました。高校に入学当時、外部生や女子に怯えつつも(当時、駿台甲府中は男子中でした)、体育の授業や部活などを通しクラス関係なしに直ぐに同級生同志仲良くなったことを記憶しています。
私は、母が看護師であったこともあり、比較的早くから医師を志しました。そして、同じクラスに医師を目指す同級生が沢山いたことは、受験で勝ち抜く際に非常に刺激となりました。また、卒後20年以上経った今でも彼らとは交流があり、高校時代に築いた人間関係はいまでも財産となっています。
山梨大学(当時は山梨医科大学)を卒業後、県外で生活してみたいという思いなどから、24年間生まれ育った山梨を飛び出し、初期研修は京都の音羽病院、専門医研修は東京の板橋中央総合病院で行いました。そして、研修中に出会った内視鏡診療に魅力と可能性を感じ、卒後6年目に東京慈恵会医科大学の大学院に進学しました。山梨大学在学当時は、東京の私立大学病院で働くとは、全く予想しておりませんでしたが、実際に働いてみると居心地がよく、楽しく働いています。大学では、最先端の内視鏡機器に触れることができ、海外の企業との共同研究なども多く、毎日が刺激にあふれています。
36歳からは、全米No.1の病院として有名なミネソタ州のMayo Clinicに留学する機会をいただき、とても充実した日々を送ることができました。留学中には、家族と過ごす時間も増え、沢山旅行できたことも今ではいい思い出です。本業の研究では、自由な発想から生まれる沢山の先進的な研究に携わることができました。また、研究を通して開発した内視鏡の処置具で特許を取得することができました。既にヨーロッパで臨床応用され、多くの癌患者さんを救っていることを耳にすると、医師になるということは、国内外問わず世界中の患者さんを救うことに貢献できるのだと実感しています。帰国後は、Mayo Clinicで学んだ内視鏡を用いた肥満症治療(内視鏡的スリーブ状胃形成術)を導入すべく準備を重ね、2020年に我々慈恵医大のグループが日本で初めて内視鏡的スリーブ状胃形成術を成功するに至りました。
世界の内視鏡機器の90%以上は日本製であり、これまで日本は消化器内視鏡分野において、その存在感を示してきました。消化管(咽頭~直腸)の癌の診断や治療においても、日本の診断レベルや治療技術は非常に高く、私も毎年アメリカのシカゴで開催される内視鏡治療のハンズオンコースに指導者として参加しています。しかしながら、混合診療を認めない日本の皆保険制度の歪や医療機器の認可の遅れ、中国の台頭などによって、内視鏡診療の分野では日本の衰退がはじまりつつあります。そんなジレンマに苛まれながらも、日々目の前の患者と向き合い、大学病院で研究を続けています。
医師の世界は非常に狭いと思いますので、この記事を読んでくださり、どこかでお会いする機会がありましたら、気軽にお声がけいただけますと幸いです。
経歴
笛吹市(旧石和町)生まれ
1999年 駿台甲府高校卒業(17期)
2005年 山梨大学医学部 卒業
2010年 東京慈恵会医科大学大学院入学
2013年 同 上 卒業
2016年 Mayo Clinic, Rochester, Minnesota Developmental Endoscopy Unit,Division of Gastroenterology and Hepatology リサーチレジデント
2018年 東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座 助教
2021年 東京慈恵会医科大学 内視鏡医学講座 講師 現在に至る